データ入力の外注相場|単価より最低受注額で総額が決まる理由

「データ入力の外注相場は1文字0.5円」——検索して最初に出てくるのはこの数字です。しかし、この単価に自社の件数を掛けても、返ってくる見積もりとは一致しません。原因は単価ではなく、ほとんどの代行会社が設定している「最低受注額」にあります。

本記事では、相場を紹介している11のメディアの数字を突き合わせたうえで、料金表を全面公開している4社の実額(うるるBPO・おまかせデータ入力・シスプロデータプロ・セブンインデックス)を使い、件数ごとに総額がいくらになるか、どの会社が最安になるかを計算しました。あわせて、海外センターで入力する場合に発注者側に生じる個人情報保護法上の義務と、AI-OCRに置き換えたほうが安くなる分岐点まで整理しています。

  1. 結論:単価は0.375〜1.0円/件数単価は4項目8〜15円。ただし総額を決めるのは最低受注額
  2. 1. 作業別の相場早見表と、単価が効き始める最小件数
  3. 2. 相場メディア11本の数字を突き合わせる——収束する項目と、割れる項目
    1. 収束している項目(メディア間の差が2倍以内)
    2. 割れている項目(3倍以上の開き)
  4. 3. 料金表を全面公開している4社の実額
    1. おまかせデータ入力(株式会社誠勝)
    2. シスプロデータプロ(株式会社シスプロ)
    3. セブンインデックス(株式会社SEVEN INDEX)
    4. うるるBPO(株式会社うるる)
    5. ここで分かる3つのこと
  5. 4. 発注件数で「最安の会社」が3回入れ替わる
    1. 逆転点の求め方
    2. 実効単価で見ると、小ロットの割高さがはっきりする
    3. 比較記事の一覧表は最低受注額の転記が不正確なことがある
  6. 5. 文字単価・項目単価・件数単価を1つの物差しに直す
    1. 件数単価を文字単価に直す
    2. 自由記述は逆に、項目単位のほうが安いことがある
    3. 比較のために揃えるべき5つの条件
  7. 6. 相場表に出てこない6つの加算
    1. 加算1:手書き原本
    2. 加算2:特急納期
    3. 加算3:スキャニング方式
    4. 加算4:フォーマット・レイアウトの初期作成費
    5. 加算5:集計の基本料金
    6. 加算6:原本の物流と処分
  8. 7. 「精度99.98%」は何に対する99.98%か
    1. ワンパンチとベリファイの選び分けは計算できる
  9. 8. 海外で入力すると安い分、発注者側の法的義務が増える
    1. 押さえるべき条文は4つ
    2. 実務上の分かれ目:「海外拠点」が別法人か、同一法人の拠点か
    3. マイナンバーを含む帳票は別扱い
    4. 発注前の確認リスト(個人情報を含む場合)
  10. 9. 内製と比べる——名刺1,000枚は社内でやるといくらか
    1. クラウドソーシングに出すなら、単価の下限は実効時給で決まる
  11. 10. AI-OCRに置き換わる分岐点は月2,300〜5,600件
  12. 11. 見積もりを取る前に決めておく8項目
    1. 見積書を受け取ったら確認する4点
  13. 12. 契約前に確認しておく法務
  14. 13. よくある質問
    1. Q. 結局、データ入力の外注相場はいくらですか?
    2. Q. 100件だけ入力してほしいのですが、頼めますか?
    3. Q. 見積もりが相場より高いのですが、値切るべきですか?
    4. Q. 手書きの原本でも同じ相場ですか?
    5. Q. 精度99.9%と言われましたが、十分ですか?
    6. Q. 海外拠点の会社は安いと聞きましたが、問題ありませんか?
    7. Q. マイナンバーが載っている書類の入力も外注できますか?
    8. Q. AI-OCRに切り替えたほうが安くなりますか?
    9. Q. クラウドソーシングと代行会社、どちらが安いですか?
  15. まとめ:単価表を見る前に、自社のロットと最低受注額を突き合わせる
    1. 参照した主な情報源

結論:単価は0.375〜1.0円/件数単価は4項目8〜15円。ただし総額を決めるのは最低受注額

先に結論を3つ示します。

  1. 単価の相場はおおむね収束している。文字入力は1文字0.3〜0.5円(公開料金の実額は0.375〜0.6円)、名簿4項目は8〜15円、応募ハガキ4項目は8〜10円。ここは各社・各メディアでほぼ一致します。
  2. 項目数が増えると相場表は当てにならなくなる。名簿10項目の相場は情報源によって19円から50円まで割れており、項目単価を公開している会社の数字を合計すると36〜43円になります。相場下限の1.9〜2.3倍です。
  3. そして総額を決めるのは単価ではなく最低受注額。公開されている最低受注額は5,000円から10万円まで20倍の開きがあり、1,000件規模の依頼では単価が最も高い会社が最も安いという逆転が起きます。

つまり「データ入力 外注 相場」に対する実務的な答えは、単価ではなく次の式です。

実際に払う金額 = max(最低受注額, 単価 × 件数)
単価が効き始める最小件数 = 最低受注額 ÷ 単価

この最小件数に自社のロットが届いていなければ、相場表の単価は自分には適用されません。以下、根拠となる実額を順に見ていきます。

1. 作業別の相場早見表と、単価が効き始める最小件数

まず全体像です。左側が相場メディアの掲載値、右側が料金表を公開している事業者の実額(いずれも下限=「〜」表記)です。

作業 課金単位 相場メディアの掲載値 公開料金の実額(下限)
文字入力(活字) 1文字 0.2〜3.0円(最頻値0.3〜0.5円) 0.375円/0.6円
文字入力(手書き) 1文字 1.0円〜 活字比+20%〜(別途見積)
名刺入力(8項目) 1枚 20〜35円 21円/27円/31円
名刺入力(10項目) 1枚 30〜70円 31円
名簿入力(4項目) 1件 8〜15円 8円/9円/15円/15円
名簿入力(10項目) 1件 19〜50円 19円/25円/36円/43円
応募ハガキ(4項目) 1枚 10〜15円 8円/10円
応募ハガキ(8〜10項目) 1枚 14〜40円 12円/14円
アンケート(択一) 1問 0.5〜1.0円 0.5円/0.6円/1.0円
アンケート(複数選択) 1問 1.5〜5.0円 1.5円/3.0円
アンケート(自由記述) 1文字 0.4〜3.0円 0.2円/0.4円/0.5円/0.6円
単純集計 一式 15,000〜19,000円 15,000円/9,500円+200円/設問
クロス集計 一式 30,000〜50,000円 30,000円/28,500円+320円/設問
申込書入力(40項目・手書き) 1枚 75円〜 74円
スキャニング(A4・300dpi・モノクロ) 1枚 4.0〜6.0円 7.1円(自動送り)/16円(裁断)/23〜30円(手置き・非裁断)
文字起こし 1分/1時間 180〜300円/分 16,920円/時(=282円/分)
レイアウト入力 1ページ 500〜900円 400円〜/500円〜/800円〜

そして、この単価に自社の件数を掛ける前に確認すべきなのが最低受注額です。

事業者 最低受注額 名簿10項目の単価 単価が効き始める最小件数
おまかせデータ入力(誠勝) 100,000円(税別・一律) 19円〜 約5,300件
うるるBPO 90,000円(税別) 25円〜(10項目セット) 3,600件
シスプロデータプロ 40,000円(税抜・名刺は12,000円) 43.0円(項目単価の合計) 約930件(名刺は約570枚)
セブンインデックス 実質5,000円程度 36円(項目単価の合計) 約140件

最小件数は5倍から38倍まで違います。500件の名簿を入力したい会社にとって、最低受注額10万円の会社の「1件19円」という単価は存在しないのと同じです。

2. 相場メディア11本の数字を突き合わせる——収束する項目と、割れる項目

「データ入力 外注 相場」で上位に表示されるページを11本確認し、掲載されている単価をすべて並べました。結果は項目によって収束の度合いがまったく違うというものです。

収束している項目(メディア間の差が2倍以内)

項目 各メディアの値
名簿4項目 8円〜/9〜15円/9〜15円/9〜15円 約1.9倍
応募ハガキ4項目 10円〜/10円/10〜15円 1.5倍
アンケート択一 0.5〜1円/1.0円〜/0.5〜1円 2.0倍
単純集計 15,000円〜/15,000〜19,000円/16,000円 1.3倍

割れている項目(3倍以上の開き)

項目 各メディアの値 割れる理由
文字入力 0.2〜2.0円/0.3〜0.5円/0.3〜3.0円/0.4〜1.0円/0.5円/0.5〜1.0円 15倍 活字か手書きか、単純入力か調査を伴うかが混ざっている
名刺入力 10〜30円/16〜32円/20〜30円/25〜70円/31〜35円 7倍 項目数(8項目か10項目か)が明示されていない
名簿10項目 19円〜/25円/25円/50円 2.6倍 「10項目」に何が含まれるかが会社ごとに違う
アンケート複数選択 1.5〜3円/1.5〜5円/1.5円〜/3.0円 3.3倍 選択肢数で単価が変わる(5項目選択で3.0円という表記もある)
データベース入力/1件 20〜50円/20〜100円/30〜100円/3〜30円(クラウドソーシング) 33倍 「1件」の定義(1レコードか1項目か)が統一されていない

ここから言えることは単純です。相場表で比較できるのは「単位と条件が明示されている項目」だけ。名簿4項目や応募ハガキ4項目のように「何を入力するか」が具体的に決まっている作業は、どの情報源を見てもほぼ同じ数字になります。逆に「文字入力」「データ入力1件」のように定義が曖昧な項目は、相場という言葉が成立していません。

もうひとつ注意点があります。相場を紹介している11本のうち、6本はデータ入力代行会社自身のオウンドメディアです(うるるBPO、リスモン・マッスル・データ、東京ソフトBPO、リバティ・データ・システム、HELP YOU、草世木)。自社の料金体系に近い数字が「相場」として提示されやすい構造がある、という前提で読む必要があります。

3. 料金表を全面公開している4社の実額

相場ではなく実売価格を見ます。以下の4社は、項目ごとの単価と最低受注額を公式サイトで公開しています(金額はいずれも下限。税表記は各社の記載どおり)。

おまかせデータ入力(株式会社誠勝)

  • 最低発注料金:一律合計10万円(税別)
  • 名刺8項目 31円〜/名簿4項目 8円〜・10項目 19円〜
  • 応募ハガキ4項目 8円〜・10項目 12円〜/申込書(手書き40項目)74円〜/健診票44項目 35円〜
  • Web情報収集 1件20円〜/択一0.5円〜・複数選択1.5円〜・自由記述0.2円〜/文字
  • 組版:原本入稿800円〜/ページ、データ入稿500円〜/ページ
  • 文字起こし:一般・記録用16,920円/時、法廷提出用28,200円/時、特急対応は各料金の2倍
  • スキャン:裁断300dpi 16円〜、裁断しない300dpi 30円〜

シスプロデータプロ(株式会社シスプロ)

  • 最低受注価格:名刺12,000円、名刺以外40,000円(税抜)
  • 名刺 基本8項目 21円/枚(+e-mail 7.5円、URL 7.5円、携帯 2.5円)
  • 名簿・はがきは項目単位:名前3.5円/郵便番号2.5円/住所6.5円/電話番号2.5円/会社名3.5円/部署名3.5円/役職名3.5円/FAX2.5円/E-mail 7.5円/URL 7.5円/性別1.5円/年齢1.5円/生年月日2.5円/フリガナ3.5円(いずれも印字。手書きは各項目0〜1.5円増)
  • アンケート:シングルアンサー0.6円/マルチアンサー3.0円(5項目選択)/フリーアンサー1文字0.6円・1項目6円(10文字程度まで)
  • アンケートフォーマット作成 3,000円(50項目まで)/単純集計 基本9,500円+200円/設問/クロス集計 基本28,500円+320円/設問
  • オプション:特急納期20%増し、手書き原本20%増し〜、フリガナ入力10円/件、ホチキスはずし16円/個
  • スキャン:自動送り300dpiモノクロ7.1円/枚、手置き300dpiモノクロ23円/枚

セブンインデックス(株式会社SEVEN INDEX)

  • 基本料金なし。ただし公式に「依頼総額が5,000円に満たない小口案件は、1件あたりの単価が割高、あるいは5,000円程度をお願いする場合がある」と明記
  • 項目単位:名前5円/郵便番号2円/住所5円/電話番号3円/会社名4円/部署名3円/役職名3円/FAX2〜3円/携帯3円/E-mail 5円/URL 4円/性別1円/年齢1円/生年月日2円/フリガナ2円/数値のみ0.5円〜
  • アンケート:シングルアンサー1円/マルチアンサー3円/フリーアンサー8円〜(1項目20文字程度まで)/フリーアンサー1文字0.5円

うるるBPO(株式会社うるる)

  • 最低価格:お見積り金額が9万円(税別)に満たない場合は一律9万円
  • 名刺10項目 31円〜/名簿(活字)4項目 9円〜・10項目セット 25円〜
  • 応募ハガキ 単項目1円〜・4項目10円〜・8項目14円〜/文字入力(活字)0.375円〜
  • アンケート 択一1円〜・複数1.5円〜・自由記述0.4円/文字〜/単純集計15,000円〜・クロス集計30,000円〜
  • 点検表・日報2項目5円〜/音声入力300円〜/分/Web情報収集1項目5円〜/レイアウト入力500円〜

ここで分かる3つのこと

(1)項目単価を合計すると、相場表と一致しなくなる。「名簿10項目」を同じ定義(名前・郵便番号・住所・電話番号・会社名・部署名・役職名・FAX・E-mail・URL)で揃えると次の通りです。

事業者 4項目 10項目 相場の下限(19円)との比
おまかせデータ入力 8円 19円 1.00倍
うるるBPO 9円 25円 1.32倍
セブンインデックス 15円 36円 1.89倍
シスプロデータプロ 15.0円 43.0円 2.26倍

4項目では最大1.9倍の差にとどまるのに、10項目では2.26倍に開きます。項目が増えるほど各社の価格差が拡大するので、相場表を使うなら「4〜5項目の定型入力」までにとどめるのが安全です。

(2)セット価格と項目合成では、同じ会社でも金額が違う。シスプロの名刺は「基本8項目 21円/枚」ですが、同社の項目別単価を8項目分足すと28.0円になります。セット価格のほうが25%安いという計算です。名刺のように項目の組み合わせが定型化している作業はセット価格、そうでない帳票は項目単価、という使い分けになっていると読めます。見積もりを取るときは「セットで頼めるパターンがあるか」を必ず聞くべきです。

(3)「名刺31円〜」の項目数は会社によって違う。おまかせデータ入力の31円は8項目、うるるBPOの31円は10項目です。同じ31円でも、e-mailとURLが入るかどうかが違います。相場メディアはどちらも「名刺31円〜」と書いていますが、これは比較になっていません。

4. 発注件数で「最安の会社」が3回入れ替わる

ここが本記事の中心です。名簿10項目・活字原本という同一条件で、4社の実際の支払額(=最低受注額と単価×件数の大きいほう)を件数別に計算しました。

件数 おまかせ
(19円/最低10万円)
うるるBPO
(25円/最低9万円)
セブン
(36円/最低5千円)
シスプロ
(43円/最低4万円)
最安
100件 100,000円 90,000円 5,000円 40,000円 セブン
500件 100,000円 90,000円 18,000円 40,000円 セブン
1,000件 100,000円 90,000円 36,000円 43,000円 セブン
2,000件 100,000円 90,000円 72,000円 86,000円 セブン
3,000件 100,000円 90,000円 108,000円 129,000円 うるるBPO
5,000件 100,000円 125,000円 180,000円 215,000円 おまかせ
10,000件 190,000円 250,000円 360,000円 430,000円 おまかせ
50,000件 950,000円 1,250,000円 1,800,000円 2,150,000円 おまかせ

最安の会社は2,500件付近と4,000件付近の2か所で入れ替わり、単価が最も高い会社(セブンインデックス36円)が2,000件までは最安です。単価だけを見て「1件19円が最安」と判断すると、1,000件の依頼では2.8倍の金額を払うことになります。

逆転点の求め方

逆転点は連立させれば手計算で出せます。

  • セブン(36円)とうるるBPO(最低9万円)の逆転点:90,000 ÷ 36 = 2,500件
  • うるるBPO(25円)とおまかせ(最低10万円)の逆転点:100,000 ÷ 25 = 4,000件
  • うるるBPOの単価が効き始めるのは 90,000 ÷ 25 = 3,600件から
  • おまかせの単価が効き始めるのは 100,000 ÷ 19 = 約5,300件から

実効単価で見ると、小ロットの割高さがはっきりする

件数 おまかせ うるるBPO セブン シスプロ
100件 1,000円/件 900円/件 50円/件 400円/件
500件 200円/件 180円/件 36円/件 80円/件
1,000件 100円/件 90円/件 36円/件 43円/件
5,000件 20円/件 25円/件 36円/件 43円/件
10,000件 19円/件 25円/件 36円/件 43円/件

100件の依頼を最低受注額10万円の会社に出すと、実効単価は1件1,000円——相場表の19円の52倍です。「安い会社に頼んだのに高かった」という現象の正体はほぼこれです。

比較記事の一覧表は最低受注額の転記が不正確なことがある

最低受注額を一覧化している比較記事もありますが、公式サイトと突き合わせると食い違いが見つかります。実際に確認できた例を挙げます。

  • ある比較記事はセブンインデックスを「基本料金、最低価格:なし」と紹介していますが、同社の価格ページには「依頼総額が5,000円に満たない小口案件は単価が割高、あるいは5,000円程度をお願いする場合がある」と明記されています。実質的なフロアはあります。
  • 同じ記事でセブンインデックスの名簿は「1項目1円〜」とされていますが、公式の項目別価格表では名前5円・住所5円で、10項目なら36円です。「1項目1円」は性別・年齢など最安の項目の値です。
  • 別の会社について「最小ロット:45,000万円(税別)」という桁の誤りも見つかりました。

結論として、最低受注額と単価は必ず事業者の公式サイトで確認してください。比較記事は候補を洗い出す用途にとどめるのが安全です。

5. 文字単価・項目単価・件数単価を1つの物差しに直す

データ入力の見積もりが比較しにくいのは、同じ作業に3つの課金単位が併存しているからです。1文字あたり、1項目あたり、1件(1枚)あたり——この3つを1つの物差しに直すと、どの買い方が有利かが見えます。

件数単価を文字単価に直す

名刺8項目の記載文字数を、標準的な名刺を想定して見積もると次のようになります(あくまで概算の仮定です。自社の原本で数え直してください)。

項目 想定文字数
名前 5
郵便番号 7
住所 20
電話番号 12
会社名 10
部署名 6
役職名 4
FAX番号 12
合計 76文字
名刺8項目の価格 文字単価に換算 文字入力の相場(0.375〜1.0円)との比
21円(シスプロ・セット) 0.28円/字 相場下限の0.74倍
27円(セブン・項目合成) 0.36円/字 相場下限とほぼ同じ
31円(おまかせ) 0.41円/字 相場下限の1.09倍

定型項目は、文字数で買うより件数・項目で買うほうが安いか同等という結果です。「名刺1,000枚をベタ打ちで1文字0.5円で」と依頼すると、76文字×0.5円×1,000枚=38,000円。同じ内容をセット価格で頼めば21,000円です。

自由記述は逆に、項目単位のほうが安いことがある

  • セブンインデックス:フリーアンサー1文字0.5円/1項目8円(20文字程度まで)。20文字なら文字単価では10円、項目単価では8円で項目単価が20%安い
  • シスプロデータプロ:フリーアンサー1文字0.6円/1項目6円(10文字程度まで)。10文字ならどちらも6円で一致

つまり「1項目◯文字程度まで」の上限を実際の記載量が下回っているなら文字単価、上回りそうなら項目単価が有利になります。アンケートの自由記述欄は回答の長さがばらつくので、事前に50件ほどサンプリングして平均文字数を出しておくと、どちらで契約すべきか判断できます。

比較のために揃えるべき5つの条件

  1. 項目数と項目名(「10項目」ではなく、何と何か)
  2. 原本の状態(活字か手書きか、紙かPDFか)
  3. 件数(最低受注額を超えるかどうかが変わる)
  4. チェック体制(シングル入力かベリファイか)
  5. 納期(特急かどうか)

この5つを固定した仕様書を1枚作り、同じ紙で各社に投げるのが、相見積もりを意味のあるものにする最短ルートです。仕様の固め方は発注書とは?注文書との違い・書き方・テンプレートもあわせてご覧ください。

6. 相場表に出てこない6つの加算

単価表に載っていない費用が、総額を1.2〜2倍に押し上げることがあります。公開料金から拾える実額を並べます。

加算1:手書き原本

シスプロデータプロの項目別価格表は印字と手書きが2列で並んでおり、差額がそのまま手書き加算です。

項目 印字 手書き 増加率
名前 3.5円 4.5円 +28.6%
住所 6.5円 7.5円 +15.4%
E-mail 7.5円 9円 +20.0%
性別・年齢 1.5円 1.5円 ±0%
10項目合計 43.0円 52.5円 +22.1%

同社は別途「手書きの原本 20%増し〜」というオプションも掲げています。うるるBPOは名簿入力・文字入力に「※活字」と明記しており、公開単価は活字前提です。相場メディアの「1文字0.3〜0.5円」も同様に活字の数字で、手書きは1.0円〜という別レンジになります。自社の原本が手書き混じりなら、相場表の数字はそのままでは使えません。

加算2:特急納期

  • シスプロデータプロ:特急納期(基準納期より1営業日早い)20%増し、超特急は応相談
  • おまかせデータ入力:特急対応は文字起こしの全項目で各料金の2倍

20%と100%では意味が違います。納期を1日縮めたいだけなのか、それとも通常の半分以下の日数が必要なのかで、加算の桁が変わります。「基準納期は何営業日か」を先に聞き、そこから逆算するのが実務です。相場メディアが指摘する「繁忙期(9〜3月)に単価が上がる会社もある」という点も、年度末の依頼では確認しておきましょう。

加算3:スキャニング方式

方式 A4・300dpi・モノクロ
自動送り(ADF) 7.1円/枚
手置き(フラットヘッド) 23円/枚
裁断スキャン(別事業者) 16円〜/ページ
裁断しないスキャン(別事業者) 30円〜/ページ

相場メディアは「スキャニングは1枚6円前後」と書いていますが、これは裁断して自動送りに通せる原本の場合の数字です。ホチキス留めの申込書や、返却が必要で裁断できない書類は3〜4倍になります。ホチキスはずしも1個15〜16円で別課金です。1,000件の申込書がホチキス留めなら、それだけで15,000〜16,000円が乗ります。

加算4:フォーマット・レイアウトの初期作成費

  • アンケートフォーマット作成:3,000円(50項目まで)、100項目まで5,000円
  • 入力フォーマット作成:1,000円/表
  • グラフ作成:300円
  • 表の挿入500円/図の貼付け500円/レイアウト400円〜(ページ単位)

金額自体は小さいものの、「単価×件数」の式に入っていない固定費である点が重要です。小ロットほど1件あたりに与える影響が大きくなります。

加算5:集計の基本料金

アンケート集計は「一式」と「基本料金+設問数」の2つの体系があり、設問数で有利不利が入れ替わります。

設問数 一式15,000円(単純集計) 基本9,500円+200円/設問
10問 15,000円 11,500円
27.5問 15,000円 15,000円
50問 15,000円 19,500円

約28問が分岐点です。クロス集計も同様に、一式30,000円と「基本28,500円+320円/設問」でおよそ5問が分岐点になります。設問数が少ないなら従量型、多いなら一式型が有利です。

加算6:原本の物流と処分

  • 原本の返送料(実費・発注者負担と明記している会社がある)
  • 書類溶解処分費(溶解処理証明書が不要な場合で「原本返送料と同額」)
  • ホルダー入稿15〜20円/枚、原本ナンバリング5円/箇所
  • 納品メディア(DVD納品で別途500円など)

個人情報を含む原本を扱う場合、作業後に原本をどうするか(返送か溶解か)は契約で決めておく事項です。処分証明書が必要なら費用も変わります。

7. 「精度99.98%」は何に対する99.98%か

データ入力代行の各社は入力精度を公称値として掲げています。確認できたものを並べます。

公称精度 方式
99.99%以上 ベリファイ入力(二重入力方式)
99.98% ベリファイ入力(2名が入力し第三者が照合)
99.96%以上 ベリファイ入力
約99.97% ベリファイ入力(1万文字あたり2〜3文字の誤り、という説明)
約99% ワンパンチ入力(1名が入力しチェック)

問題は、この%の分母がほとんど示されていないことです。1文字あたりなのか、1項目あたりなのか、1件(1レコード)あたりなのかで、実際に混入する誤りの数は10倍単位で変わります。名簿10項目×10,000件(=100,000項目、名刺換算で約760,000文字)を発注した場合の誤り数を計算するとこうなります。

公称精度 「1件あたり」なら 「1項目あたり」なら 「1文字あたり」なら
99.99% 1件の誤り 10項目の誤り 76文字の誤り
99.98% 2件 20項目 152文字
99.96% 4件 40項目 304文字
99%(ワンパンチ) 100件 1,000項目 7,600文字

同じ「99.98%」でも、誤りが2件なのか152文字なのかでは、受入検査にかかる工数がまったく違います。見積もり依頼時には「精度の分母は文字・項目・レコードのどれですか」と一言聞いてください。これに即答できるかどうかは、品質管理体制そのものの指標にもなります。

ワンパンチとベリファイの選び分けは計算できる

ベリファイ(2名が独立して同じ内容を入力し、突き合わせて差分を修正する方式)は単価が上がりますが、誤りが減る分だけ発注者側の検査・修正工数が減ります。分岐点は次の式です。

ベリファイの追加費用 < (ワンパンチの誤り数 − ベリファイの誤り数)× 1件を発見して直す社内コスト

公称値どおり99%と99.97%だとすると、10,000件・10項目(100,000項目)の依頼で誤りは1,000項目と30項目。差は970項目です。1項目の誤りを見つけて直すのに社内で3分・人件費時給2,000円かかるなら、970項目×3分×2,000円÷60=97,000円。ベリファイの追加費用がこれを下回るならベリファイが得、という判断になります。

ただし現実には、「誤りを見つけられなかった場合の損失」のほうが大きいケースがほとんどです。請求書の送付先住所、口座番号、健診票の数値のように、誤りが1件でも実害が出るデータではベリファイ一択と考えてよいでしょう。品質を安定させる社内の仕組みについては外注管理の方法を完全解説——進捗・品質・納期を安定させる仕組みとテンプレートで扱っています。

8. 海外で入力すると安い分、発注者側の法的義務が増える

相場メディアは「海外拠点を持つ会社は低価格」と紹介し、選び方の項目に「国内処理か海外処理か」を1行だけ挙げています。しかし、個人情報を含む原本を海外で入力する場合、発注者(委託元)の側に法律上の義務が発生します。ここは費用と同じ重みで検討すべき論点です。

実際、公開料金が最も細かい事業者の1つであるシスプロデータプロは、公式サイトに「土地・人件費のメリットを生かすため、中国武漢市に武漢BPOセンターを設置しております」「原本などの現物の取扱いが必要なスキャニングサービスなどは日本で行い、デジタルデータのため国境を超えることが容易なものは武漢データエントリーセンターで行うようにしています」と明記しています。低価格の理由が明示されている点は誠実ですが、発注者はこの構造を前提に手続きを踏む必要があります。

押さえるべき条文は4つ

条文 内容
個人情報保護法25条 個人データの取扱いを委託する場合、委託先に対して必要かつ適切な監督を行わなければならない(委託先の監督)
個人情報保護法27条 第三者提供には原則本人同意が必要。ただし委託に伴う提供は第三者提供に当たらない(=国内委託なら同意不要)
個人情報保護法28条 外国にある第三者への個人データの提供には、原則あらかじめ本人の同意が必要。個人情報保護委員会は「この点は、外国にある第三者に個人データの取扱いを委託する場合も同様です」と明示している
番号法10条・11条 個人番号(マイナンバー)関係事務の委託を受けた者は、委託者の許諾を得た場合に限り再委託できる。委託者には安全管理の監督義務がある

実務上の分かれ目:「海外拠点」が別法人か、同一法人の拠点か

ここが判断のポイントです。

  • 委託先が外国にある別法人(現地法人・現地の協力会社)の場合:法28条1項の「外国にある第三者への提供」に当たり、原則として本人の同意が必要になります。同意を得る際には、施行規則に基づき当該外国の名称・制度・第三者が講じる措置などの情報提供も求められます。例外は、①個人情報保護委員会規則で定める国(現時点でEUと英国)にある場合、②基準適合体制を整備している場合、③法27条1項各号に該当する場合です。
  • 同一法人の海外拠点(自社の外国支店など)で処理する場合:法人格が同じなら「第三者への提供」には当たりません。ただし安全管理措置の一環である「外的環境の把握」が必要です。

個人情報保護委員会はFAQで、「外国にある第三者に個人データの取扱いを委託する場合、委託元は、委託先が所在する外国の個人情報の保護に関する制度等を把握した上で、委託先の監督その他の安全管理措置を講じる必要があります」とし、さらに「委託先が外国にある第三者に再委託する場合、再委託先が所在する外国の制度等も把握した上で、安全管理措置を講じる必要があります」と述べています。加えて、「委託先や再委託先が、日本国内に所在するサーバに保存されている個人データにアクセスして、これを取り扱う場合においても同様です」とされている点は重要です。「原本もサーバも日本国内にあるから大丈夫」とは言えません。

そのうえで、保有個人データの安全管理のために講じた措置として、委託先・再委託先が所在する外国の名称を明らかにし、その制度を把握したうえで講じた措置の内容を本人の知り得る状態に置く必要があるとされています。これは自社のプライバシーポリシーの記載に直結します。

マイナンバーを含む帳票は別扱い

従業員の扶養控除等申告書、支払調書の作成に使う支払先情報、健康保険・年金の届出書類など、個人番号が記載された帳票の入力を委託する場合は番号法の適用を受けます。特に押さえるべきは再委託の扱いです。

番号法10条1項:個人番号利用事務等の全部又は一部の委託を受けた者は、当該個人番号利用事務等の委託をした者の許諾を得た場合に限り、その全部又は一部の再委託をすることができる。

一般の個人データの委託では、契約書で包括的に再委託を認めておく運用が広く行われています。しかしマイナンバーについては、委託者(発注者)の許諾が法律上の要件です。データ入力代行会社が在宅ワーカーや海外センターに作業を回している場合、それは再委託に当たり得ます。「誰が実際に入力するのか」を確認せずに発注すると、知らないうちに要件を満たさない状態になりかねません。

発注前の確認リスト(個人情報を含む場合)

  1. 入力作業を行う場所は国内か海外か。海外なら国名はどこか
  2. その拠点は委託先と同一法人か、別法人か(別法人なら法28条の検討が必要)
  3. 再委託(在宅ワーカー・協力会社を含む)はあるか。あるなら再委託先の所在国はどこか
  4. 原本・スキャンデータの保管場所と保管期間、作業後の削除・返却・溶解の方法
  5. プライバシーマーク/ISO27001(ISMS)の取得状況と、認証の対象範囲に当該拠点が含まれるか
  6. 対象データにマイナンバーが含まれていないか(含むなら再委託の許諾手続きを契約に明記)
  7. 自社のプライバシーポリシーに、委託先所在国と講じた措置を記載する必要がないか

越境移転や外的環境の把握の具体的な対応方法は事案によって判断が分かれます。個人情報保護委員会の公表資料を確認するか、必要に応じて弁護士など専門家に相談してください。本記事の記載は制度の概要を整理したものであり、個別の適法性を保証するものではありません。

9. 内製と比べる——名刺1,000枚は社内でやるといくらか

外注すべきかどうかは、社内でやった場合のコストと並べれば判断できます。データ入力代行会社が公表している作業時間の目安を使って計算します。

ある事業者は「名刺1枚あたりの入力にかかる時間は3分程度」という前提で、1,000枚=50時間と計算しています。これを時給別に換算すると次のようになります。

担当者 時給 1,000枚の人件費 1枚あたり
アルバイト・契約社員 1,100円 55,000円 55.0円
東京都の最低賃金(令和7年度) 1,226円 61,300円 61.3円
東京都・令和8年度の目安どおりなら 1,280円 64,000円 64.0円
派遣社員 1,400円 70,000円 70.0円
外注(名刺8項目) 21,000〜31,000円 21〜31円

この試算では外注が1.8〜3.3倍安いという結果ですが、前提が2つ効いています。1つは「1枚3分」という作業時間。もう1つは外注額が最低受注額を上回っていることです。名刺1,000枚×21円=21,000円は、最低受注額12,000円の会社なら成立しますが、最低受注額9万円・10万円の会社では9万円・10万円になり、内製より高くなります。ここでも最低受注額が効いてきます。

加えて、人件費側は今後上がり続けます。厚生労働省の中央最低賃金審議会は2026年7月28日、令和8年度の地域別最低賃金額改定の目安を答申しました。Aランク54円・Bランク56円・Cランク56円で、目安どおりに引き上げられた場合の全国加重平均は1,176円(上昇額55円)、東京都は1,280円になる見通しです。時給が上がるほど内製の損益分岐点は外注側に動きます。

クラウドソーシングに出すなら、単価の下限は実効時給で決まる

クラウドソーシングは最低受注額がないため小ロットに強い一方で、単価を低く設定しすぎると応募が集まらないか、品質が落ちます。判定はやはり計算です。

受託者の実効時給 = 1件の単価 ÷ 1件あたりの所要分 × 60

提示単価 1件の所要時間 受託者の実効時給 判定
50円 5分 600円 最低賃金の目安1,176円の半分。応募は期待しにくい
100円 5分 1,200円 ほぼ最低賃金水準
150円 5分 1,800円 データ入力の時間単価相場(1,000〜1,400円)を上回る
36円 4分 540円 代行会社の単価をそのまま個人に出しても成立しない

代行会社の単価(1件36円など)をそのままクラウドソーシングに転用できないのは、代行会社は分業・専用ツール・慣れによって1件あたりの所要時間を圧縮しているからです。入力速度の目安として「1分間に100文字前後、好待遇を狙うなら120文字前後、プロは150文字前後」という数字がクラウドソーシング側から示されています。自社案件の1件あたり文字数をこの速度で割れば、所要時間の当たりがつきます。

あるBPO事業者は「1件5分の作業に単価50円を提示すると時給換算600円。最低賃金にも届かず受託できない」と明言しています。単価を決めるときは、相場表ではなく実効時給から逆算するのが確実です。フリーランス・クラウドソーシングとの使い分けについては外注先の選び方|比較すべき7つの判断基準【選定チェックリスト付き】もあわせてご覧ください。

10. AI-OCRに置き換わる分岐点は月2,300〜5,600件

定型帳票なら、人手入力ではなくAI-OCRという選択肢があります。国内シェア上位のAI-OCRサービスは料金を公開しているので、人手との分岐点を計算できます。

プラン 月額 初期費用 月無料枠 単価
Lite 40,000円〜 0円分 18,000円分 1範囲3円/1枚(全文読取)30円
Standard 100,000円〜 200,000円分 50,000円分 1範囲1円/1枚10円
Pro 200,000円〜 200,000円分 200,000円分 1範囲1円/1枚10円

10項目の帳票(=10範囲)を月に何枚処理するかで、人手入力の実効総額と比べます。

件数/月 人手(19円・最低10万円) 人手(36円・最低5千円) 人手(43円・最低4万円) AI-OCR Lite AI-OCR Standard
500件 100,000円 18,000円 40,000円 40,000円 100,000円
1,000件 100,000円 36,000円 43,000円 52,000円 100,000円
2,000件 100,000円 72,000円 86,000円 82,000円 100,000円
3,000件 100,000円 108,000円 129,000円 112,000円 100,000円
5,000件 100,000円 180,000円 215,000円 172,000円 100,000円
10,000件 190,000円 360,000円 430,000円 322,000円 150,000円
20,000件 380,000円 720,000円 860,000円 622,000円 250,000円

分岐点はこうなります。

  • 単価43円の人手 vs Lite:月1,693件から人手が高くなる
  • 単価36円の人手 vs Standard:月2,778件から
  • 単価19円の人手 vs Standard:月5,556件から

ざっくり月2,300〜5,600件が目安です。ただし、この比較には次の前提があるので注意してください。

  1. 初期費用が別:Standard/Proは初期費用200,000円分。1年で割ると月あたり約16,700円が上乗せされ、分岐点はさらに右にずれます
  2. 読取結果の確認工数は自社に残る:AI-OCRは読み取り結果の確認・修正が発注者側の作業です。代行会社に頼んだ場合の「納品されたデータをそのまま使える」状態とは工程が違います
  3. 帳票定義の設定が必要:どの位置のどの項目を読むかの定義作成が必要で、帳票の種類が多いほどコストが増えます
  4. 手書き・非定型は精度が落ちる:定型帳票の活字であれば高精度ですが、手書きや自由記述が多い原本では人手のほうが確実です

結論として、「毎月同じ様式の帳票が数千件」ならAI-OCR、「年に1〜2回まとまった量」「様式がバラバラ」「手書きが多い」なら代行会社という切り分けになります。なお、代行会社側もAI-OCR内蔵スキャナーを導入して人手と組み合わせる方向に動いており、両者は排他的な選択肢ではありません。

11. 見積もりを取る前に決めておく8項目

ここまでの内容を、発注前のチェックリストにまとめます。この8項目を1枚の仕様書にして各社に同じ紙を渡せば、返ってきた見積もりを横並びで比較できます。

# 決めること 書き方の例 これが変わると
1 件数(総ロット) 名簿 3,200件 最低受注額を超えるかどうかが変わる。総額が最も動く
2 入力項目の名前と数 氏名・カナ・郵便番号・住所・電話・会社名・部署・役職の8項目 項目数が増えるほど各社の価格差が拡大する
3 原本の形式と状態 A4申込書・活字7割/手書き3割・ホチキス留めあり 手書きで+20%前後、ホチキスはずしで1個15〜16円
4 入稿方法 紙で郵送/PDFでデータ入稿 スキャン費(7.1〜30円/枚)と原本の往復送料が変わる
5 チェック体制 ベリファイ入力を希望。精度の分母を明示のこと 単価が上がる代わりに社内の受入検査工数が減る
6 納期 原本到着から10営業日 特急で20%増し〜2倍
7 納品形式 Excel(指定フォーマット・列定義を添付) 指定システムへの直接入力は単価が上がることがある
8 個人情報の取扱い 作業場所の国名/再委託の有無/作業後は溶解処分・証明書あり 費用だけでなく、法令上の手続きが変わる

見積書を受け取ったら確認する4点

  1. 最低受注額に触れているか。単価×件数の金額が最低額を下回っていないか自分で検算する
  2. 単価の単位(1文字/1項目/1件/1枚)が明記されているか
  3. 加算条件が金額で書かれているか(「手書きは別途」ではなく「手書きは20%増し」)
  4. 修正対応の範囲と期限。納品後に誤りが見つかった場合、どこまで無償で直すか

12. 契約前に確認しておく法務

データ入力の委託は、契約内容によって下請代金支払遅延等防止法(2026年1月1日に「製造委託等に係る中小企業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」=取適法へ改称)の対象になり得ます。紙の帳票をExcelデータにする作業は情報成果物作成委託や役務提供委託に該当する場合があり、その場合は発注者側に書面(または電磁的方法)の交付義務、支払期日の設定義務(受領日から60日以内)などが生じます。

データ入力に特有の論点としては次の2つに注意が必要です。

  • やり直しの費用負担:入力ミスの修正は「受注者の責め」なら無償で当然ですが、発注者が仕様(項目定義や表記ルール)を後から変えたことによる再入力は別です。何が無償修正で何が有償かを契約時に線引きしておかないと、トラブルの温床になります
  • 買いたたき:相場より著しく低い単価を一方的に定めることは問題になり得ます。第9章の実効時給の計算は、この観点でも役に立ちます

詳細は外注に関する下請法の最新解説:リスク回避と合法的運用のポイントで解説しています。自社が適用対象になるかどうかは資本金区分と取引類型で決まるため、判断に迷う場合は公正取引委員会・中小企業庁の資料を確認するか、専門家にご相談ください。

13. よくある質問

Q. 結局、データ入力の外注相場はいくらですか?

A. 作業単位ごとに次が目安です。文字入力(活字)1文字0.375〜0.6円、名簿4項目8〜15円/件、名簿10項目19〜43円/件、名刺8項目21〜31円/枚、応募ハガキ4項目8〜10円/枚、アンケート択一0.5〜1.0円/問。ただし最低受注額(5,000円〜10万円)を下回るロットでは、この単価は適用されません

Q. 100件だけ入力してほしいのですが、頼めますか?

A. 頼めますが、最低受注額の低い会社を選ぶ必要があります。最低受注額5,000円程度の会社なら5,000円前後、最低受注額9万円の会社に出すと9万円です。小ロットでは「単価が安い会社」ではなく「最低受注額が低い会社」を探すのが正解です。

Q. 見積もりが相場より高いのですが、値切るべきですか?

A. まず原因を分解してください。(1)最低受注額に達していないだけなら、値切るのではなく依頼件数をまとめるか会社を変えるのが解決策です。(2)手書き・特急・非裁断スキャンなどの加算が乗っているなら、納期を1週間延ばす、原本を裁断可能な状態にするほうが効果的です。(3)項目数が多いなら、本当に必要な項目だけに絞ります。名簿10項目を4項目に削れば、単価は19〜43円から8〜15円に下がります。

Q. 手書きの原本でも同じ相場ですか?

A. いいえ。公開料金では手書きは活字比で20%前後の加算です(項目別に0〜1.5円の上乗せ、10項目合計で+22.1%という実例があります)。相場メディアの「1文字0.3〜0.5円」も活字前提で、手書きは1.0円〜という別レンジになります。くせ字・旧字・薄れた原本はさらに加算されるのが一般的です。

Q. 精度99.9%と言われましたが、十分ですか?

A. 分母を確認しないと判断できません。10項目×10,000件の依頼で、99.9%が「1件あたり」なら誤り10件ですが、「1項目あたり」なら100項目、「1文字あたり」なら約760文字です。「その%は文字・項目・レコードのどれに対するものですか」と聞いてください。

Q. 海外拠点の会社は安いと聞きましたが、問題ありませんか?

A. コスト面では有利ですが、個人情報を含むデータの場合は発注者側に手続きが発生します。委託先が外国にある別法人なら個人情報保護法28条の「外国にある第三者への提供」に当たり、原則として本人の同意(または基準適合体制の確認など)が必要です。同一法人の海外拠点でも、当該国の制度を把握したうえで安全管理措置を講じる「外的環境の把握」が求められ、委託先所在国の名称等を本人の知り得る状態に置く必要があります。まずは「実際にどの国で誰が入力するのか」を確認してください。

Q. マイナンバーが載っている書類の入力も外注できますか?

A. 委託自体は可能ですが、番号法の規律が加わります。特に再委託には委託者(発注者)の許諾が法律上の要件です(番号法10条1項)。在宅ワーカーや海外センターへの再委託が行われる場合は、許諾の手続きを契約に組み込む必要があります。委託先の監督義務(同11条)も別途課されます。取扱いに不安がある場合は、個人情報保護委員会の「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」を確認するか、専門家にご相談ください。

Q. AI-OCRに切り替えたほうが安くなりますか?

A. 定型帳票を毎月まとまった量処理するなら検討の価値があります。10項目の帳票なら、公開料金ベースで月2,300〜5,600件あたりが分岐点です。ただし初期費用(20万円分)、帳票定義の作成、読取結果の確認工数が別途かかります。手書きが多い原本や、様式がその都度違う書類には向きません。

Q. クラウドソーシングと代行会社、どちらが安いですか?

A. ロット次第です。数百件までならクラウドソーシングや最低受注額の低い代行会社が安く、数千件を超えると単価の低い代行会社が有利になります。ただしクラウドソーシングは単価を実効時給から逆算しないと応募が集まりません。1件5分の作業なら、最低賃金の目安(令和8年度の全国加重平均1,176円)を満たすには1件100円前後が必要です。また、個人情報を含む作業では守秘義務契約や本人確認の管理コストが発注者側に残ります。

まとめ:単価表を見る前に、自社のロットと最低受注額を突き合わせる

「データ入力 外注 相場」の答えは単価表にありますが、支払う金額の答えは単価表にはありません。本記事で確認できたことを整理します。

  • 単価の相場は4〜5項目の定型入力までは収束している(名簿4項目8〜15円、応募ハガキ4項目8〜10円、文字0.375〜0.6円)
  • 項目数が増えると比較が成立しなくなる。名簿4項目は各社8〜15円(1.9倍)に収まるが、10項目では19〜43円(2.26倍)に開く
  • 最低受注額は5,000円〜10万円で20倍の開きがあり、これが総額を決める。単価が効き始めるのは「最低受注額 ÷ 単価」件から
  • 同一条件でも発注件数によって最安の会社が2,500件付近と4,000件付近で入れ替わる。2,000件までは単価が最も高い会社が最安
  • 単価表に載らない加算がある:手書き+22%前後、特急20%増し〜2倍、非裁断スキャンで3〜4倍、フォーマット作成費、原本の往復送料と処分費
  • 精度の公称値は分母(文字/項目/レコード)を確認しないと比較できない
  • 海外で入力する場合、発注者側に個人情報保護法28条・外的環境の把握の対応が生じる。マイナンバーを含むなら再委託に許諾が必要
  • 内製との比較は時給×所要時間で計算できる。最低賃金は令和8年度の目安で全国加重平均1,176円に上がる見通しで、内製コストは上昇方向
  • AI-OCRとの分岐点は月2,300〜5,600件。ただし確認工数は自社に残る

やることは3つだけです。(1)自社のロット(件数)を確定する。(2)候補各社の公式サイトで最低受注額と項目別単価を確認する。(3)max(最低受注額, 単価×件数)で総額を計算して並べる。この3手順を踏めば、相場記事を何本読むよりも早く、自社にとっての正解が出ます。

他の業務の外注相場は外注費用の相場まとめ|業種別・作業種別に徹底解説で一覧にしています。事務系のバックオフィス業務を継続的に任せたい場合はオンラインアシスタント比較|公式料金6社を時間単価に直すと順位が変わる、会計データの入力(仕訳)を委託したい場合は記帳代行の相場|同じ仕訳数で3倍開く理由と年間総額の出し方経理代行の費用相場|料金を動かす4つの変数と見積もりの検算方法もあわせてご覧ください。

参照した主な情報源

  • おまかせデータ入力(株式会社誠勝)料金ページ:https://data.sei-syou.com/price/
  • シスプロデータプロ サービス料金:https://www.datapro-syspro.com/price/index.html
  • セブンインデックス 価格表:https://www.7-index.com/price.html
  • うるるBPO 料金一覧:https://www.uluru.jp/charge/
  • 個人情報保護委員会 FAQ「委託は法第27条第1項の第三者提供に当たらないとされていますが…」:https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q12-1/
  • 個人情報保護委員会 FAQ「外的環境の把握について、外国にある第三者に個人データの取扱いを委託する場合…」:https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q10-24/
  • 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(2026年7月28日):https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74920.html
  • DX Suite 料金プラン:https://dx-suite.com/price/
  • 個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)/行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(同)

※本記事の金額はすべて2026年8月時点で各社が公開している料金表に基づく調査結果です。表示は各社の記載(税別・税抜等)に従っており、実際の見積もりは仕様・数量・時期によって変わります。最新の料金は各社の公式サイトでご確認ください。法令・制度に関する記述は概要の整理であり、個別の判断については専門家または所管官庁にご相談ください。

ガイチュウ博士

私は「ガイチュウ博士」。
外注Baseで、依頼の判断をサポートするために設計された架空のナビゲーターです。

これまでに蓄積された多数の外注事例をもとに、「この依頼は進めるべきか」「一度止まるべきか」を整理する役割を担っています。
感覚ではなく、条件や状況、リスクを分解して判断するのが特徴です。

得意なのは、曖昧な状態の整理です。
「なんとなく不安」「進めていいかわからない」といった状態を、そのままにしません。
チェック項目として分解し、一つずつ確認できる形に整えます。

私は結論を急ぎません。
必要な情報が揃っていない場合は、そのまま進めることのリスクも含めてお伝えします。
判断は、材料が揃ってからで十分です。

外注は便利ですが、同時に判断の連続でもあります。
その判断を落ち着いて行うための補助として、ここにいます。

ガイチュウ博士をフォローする
業種・業務別外注相場・費用の実態

コメント