経理代行の費用相場|料金を動かす4つの変数と見積もりの検算方法

「経理代行 費用」で検索すると、月額5,000円という数字と月額50万円という数字が同じ検索結果に並びます。100倍の開きがあるため、自社の予算取りにそのまま使える数字がどれなのか判断できない——これが最初にぶつかる壁です。しかも各社が載せている相場表はほぼ例外なく「月間仕訳数」の一軸だけで組まれており、実際の見積書が相場表からずれたときに、何が原因でずれているのかを説明してくれません

結論から言えば、記帳代行だけを依頼する場合の中心帯は月額1万〜3万円です。ここに給与計算を足すと月1.5万〜3万円、決算・税務申告まで含めると年10万〜30万円が別途かかります。ただしこの「月1万〜3万円」は、会計ソフトと銀行口座・クレジットカードをすべてデータ連携し、証憑をクラウドで渡すことを前提にした価格です。同じ仕訳数でも領収書や通帳のコピーを郵送で渡す契約に変えると、実売の価格表で1.7〜1.8倍になります。

この記事では、複数の事業者・会計ソフトベンダー・クラウドソーシング運営会社の公表値を1つの表に並べて相場の幅の正体を示したうえで、手元の見積もりが妥当かを「1仕訳あたり単価」と「実効時給」の2通りで検算する方法、そして「丸投げしたい」と考えたときに必ず突き当たる税理士法上の線引きを、条文と国税庁の解釈にあたって整理します。金額を覚えるための記事ではなく、目の前の見積書に判断を下すための記事です。

  1. 目次
  2. 経理代行の費用相場【業務別の早見表】
  3. 情報源を横断して相場を並べる
    1. 記帳代行:月間仕訳数別の月額
    2. 時間制の場合の単価
  4. 相場表が当てにならない理由:料金を動かす4つの変数
    1. 変数1:資料の渡し方(最大の変数)
    2. 変数2:納品スピード
    3. 変数3:帳簿の作り込み度合い
    4. 変数4:税理士業務が含まれるか
  5. 見積もりを検算する2つの方法
    1. 方法1:1仕訳あたり単価に割り戻す
    2. 方法2:実効時給に換算する
  6. 「丸投げ」の限界:税理士でなければ請けられない業務
    1. 税理士だけができる3つの業務
    2. 線引きを分ける2つのキーワード
    3. 発注者としての実務的な確認方法
  7. 自社で雇う場合との比較
  8. 見落としやすい追加費用
    1. 電子帳簿保存法への対応は自社の義務
    2. 解約時にデータが返ってくるか
  9. 発注前チェックリスト【12項目】
  10. 契約前に決めておく実務項目
    1. 取引ルールを定めた法律を押さえる
    2. 機密保持と権限設計
  11. よくある質問
    1. Q. 結局、経理代行の費用はいくら見ておけばよいですか?
    2. Q. 相場より安い見積もりが出てきました。何を確認すべきですか?
    3. Q. 記帳から決算・申告まで1社に丸投げできますか?
    4. Q. 顧問税理士がいる場合、経理代行を別に頼む意味はありますか?
    5. Q. 費用を下げるために、発注者側でできることは何ですか?
    6. Q. 経理代行に払った費用は、どの勘定科目で処理しますか?
  12. 関連記事
  13. まとめ
    1. 参照元

目次

  1. 経理代行の費用相場【業務別の早見表】
  2. 情報源を横断して相場を並べる
  3. 相場表が当てにならない理由:料金を動かす4つの変数
  4. 見積もりを検算する2つの方法
  5. 「丸投げ」の限界:税理士でなければ請けられない業務
  6. 自社で雇う場合との比較
  7. 見落としやすい追加費用
  8. 発注前チェックリスト【12項目】
  9. 契約前に決めておく実務項目
  10. よくある質問
  11. 関連記事

経理代行の費用相場【業務別の早見表】

経理代行は「経理の仕事をまとめて外に出す」という単一のサービスではなく、記帳・給与計算・決算・請求書発行といった独立した業務の組み合わせです。料金も業務ごとに別建てで積み上がります。まず全体像を押さえてください。

業務料金の決まり方中心帯の目安備考
記帳代行月間仕訳数に応じた月額
または1仕訳あたりの従量
月額1万〜3万円
(1仕訳50〜100円)
経理代行の中核。仕訳数が増えると1仕訳単価は下がる
給与計算代行基本料金+従業員1名あたり基本5,000〜3万円
+1名500〜2,000円
従業員10名なら月1.5万〜3万円になるケースが多い
年末調整年1回。基本料金+1名あたり1名500〜5,000円
(基本料金2万円程度が別途の場合あり)
月額に含まれず、オプション扱いが一般的
決算・税務申告年1回の一括法人 年10万〜30万円
個人 年5万〜15万円
税務申告書の作成は税理士の独占業務(後述)
請求書発行代行発行件数に応じた従量1件500〜1,000円証憑処理が多い場合は1件100〜300円の加算になる例も
支払代行月額月1万円〜振込データ作成など。実行権限の設計に注意
フル外注・常駐型月額または個別見積月15万〜50万円経理部門を丸ごと置き換える規模

「経理代行 費用」の検索結果に月5,000円と月50万円が同居するのは、この表のどの行を指しているかが記事ごとに違うためです。自社が必要としているのが記帳だけなのか、給与計算まで含むのか、決算まで丸ごとなのかを先に確定させないと、どの相場も自分の数字にはなりません。

情報源を横断して相場を並べる

相場は1つの記事だけを見ると「その事業者の売りたい価格」に引っ張られます。ここでは性格の異なる情報源——BPO事業者、会計ソフトベンダー、通信事業者、クラウドソーシング運営会社——の公表値を1つの表に並べます。

記帳代行:月間仕訳数別の月額

月間仕訳数パーソル
ビジネスプロセスデザイン
クラウドソーシングTimes
(クラウドワークス運営)
マルゴトマネーフォワード
〜100仕訳10,000円程度1万円程度10,000円〜1万〜2万円
101〜200仕訳15,000円程度1万5,000円程度10,000〜30,000円
(101〜300仕訳)
2万〜3万5,000円
201〜300仕訳20,000円程度2万円程度
301〜400仕訳25,000円程度2万5,000円程度30,000円〜
(301仕訳〜)
401仕訳〜30,000円程度〜3万円〜

注目すべきは4つの情報源がほぼ一致していることです。ホームページ制作やシステム開発の相場が情報源によって数十倍に割れるのに対し、記帳代行は仕訳数という共通の物差しがあるため相場が収束します。したがって「〜100仕訳で月額1万円前後」という基準線は、そのまま自社の見積もり評価に使えます

一方、料金の建て方には従量制と月額パック制の2通りがあります。従量制なら1仕訳50〜100円が目安です。月額パック制の場合は「月額2万円(300仕訳まで)」のように上限仕訳数がセットになっており、超過分は追加課金されるのが一般的です。繁忙期に仕訳数が跳ねる業種では、この上限の設定を見落とすと想定外の請求につながります。

記帳代行だけを切り出して検討している場合は、記帳代行の相場|同じ仕訳数で3倍開く理由と年間総額の出し方で、事業者3社の公開料金表を同じ仕訳数で横並びにしています。自分の仕訳数を数える手順、月額に含まれない初期費用・決算処理料の扱い、商工会議所の記帳指導という選択肢もそちらにまとめました。

時間制の場合の単価

仕訳数ではなく稼働時間で契約するケースもあります。この場合の相場は依頼先によって明確に段差があります。

依頼先時間単価出典
クラウドソーシング(記帳・領収書整理)1,500円〜/時間クラウドワークス「発注相場」経理・会計・事務
クラウドソーシング(記帳代行全般)1,500〜2,000円/時間クラウドソーシングTimes
記帳代行業者・税理士事務所2,000〜3,000円/時間弥生/クラウドソーシングTimes

クラウドワークスが公表している実際の発注事例では、税理士事務所の記帳スタッフ募集が時間単価1,000〜1,500円、在宅での記帳代行・決算処理の依頼が時間単価1,500〜2,000円で出ています。この時間単価は、後述する見積もりの検算で重要な役割を果たします

相場表が当てにならない理由:料金を動かす4つの変数

ここからがこの記事の本題です。上の相場表を持って見積もりを取ると、多くの場合相場より高い金額が返ってきます。理由は、相場表が仕訳数という一軸しか持っていないのに対し、実際の価格は少なくとも4つの変数で決まっているからです。

変数1:資料の渡し方(最大の変数)

これが料金を最も大きく動かします。実際に価格表を公開している経理代行事業者(サイバークルー「日本橋記帳・経理代行サービス」)の料金体系を見ると、同じ仕訳数でも資料の渡し方だけで価格が1.7〜1.8倍変わることが読み取れます。

月間仕訳数データ連携あり
証憑はクラウドで共有
データ連携あり
証憑は郵送・持参
データ連携なし
証憑も通帳もすべて郵送
倍率
100仕訳10,000円/月13,000円/月17,500円/月1.75倍
200仕訳19,000円/月25,000円/月33,000円/月1.74倍
300仕訳27,000円/月36,000円/月48,000円/月1.78倍

※いずれも税別。この事業者の「データ連携あり」は、クラウド会計・給与・請求書・ネットバンク・クレジットカードをすべて連携する前提。300仕訳超は別途見積もり。

ここから読み取れることは2つあります。第一に、各社が載せている「〜100仕訳で月1万円」という相場は、データ連携済みを前提にした最も安い条件の価格だということです。第二に、この差額は事業者の利益ではなく作業量そのものを反映しています。紙の領収書を並べ替え、通帳を目で追って手入力する作業は、連携済みデータを仕訳ルールで処理する作業と比べて明らかに時間がかかります。

発注者側の実務としては、見積もりを取る前にネットバンキングとクレジットカードの明細連携を済ませておくだけで、同じ業務が2〜3割安くなる可能性があるということです。値引き交渉より確実で、しかも自社の月次締めも早くなります。

変数2:納品スピード

相場記事がほとんど触れていないのがこれです。同じ事業者の価格表では、月次の納品を早めるオプションが以下のように設定されています。

月間仕訳数10営業日コース5営業日コース
100仕訳基本料金+10,000円/月基本料金+15,000円/月
200仕訳基本料金+17,000円/月基本料金+25,000円/月
300仕訳基本料金+24,000円/月基本料金+35,000円/月

100仕訳・データ連携ありの基本料金が10,000円ですから、5営業日での納品を求めると合計25,000円となり、基本料金の2.5倍になります。300仕訳でも27,000円+35,000円=62,000円で2.3倍です。

裏を返せば、「月次試算表がいつ手元に必要か」を決めずに見積もりを取ると、必要のないスピードに毎月お金を払い続けることになります。融資審査や取締役会で月次を使う予定がないなら、標準納期で足ります。ここは発注前に社内で決めておくべき最重要の仕様です。

変数3:帳簿の作り込み度合い

「仕訳を入れる」だけなのか、経営判断に使える粒度まで整えるのかで料金が変わります。同じ価格表のオプションは以下のとおりです。

  • 部門別損益:+6,000円/月〜(3部門以上は別途見積もり)
  • 月次減価償却:+3,000円/月
  • 月次棚卸:+3,000円/月

減価償却や棚卸を月次で計上しないと、月次の利益は実態からずれます。「月次試算表が出ているのに数字が信用できない」という不満の多くは、この3つが年次処理のままになっていることが原因です。安い見積もりを選んだ結果、出てきた試算表が経営判断に使えないのでは本末転倒なので、何のために月次を作るのかから逆算して要否を決めてください。

変数4:税理士業務が含まれるか

これは価格差の要因であると同時に、そもそも依頼できるかどうかの法的な線引きでもあります。記帳代行業者に決算・申告まで頼めるのかという問題で、詳しくは次章で条文にあたって整理します。

見積もりを検算する2つの方法

相場表と見比べるだけでは「高い気がする」で止まります。手元の見積書を分解して、数字が説明可能かどうかを確かめる方法を2つ紹介します。

方法1:1仕訳あたり単価に割り戻す

月額提示なら、月額 ÷ 想定月間仕訳数で1仕訳単価を出します。先ほどの実売価格表を割り戻すと次のようになります。

仕訳数データ連携あり(クラウド)データ連携なし(全郵送)
100仕訳100円/仕訳175円/仕訳
200仕訳95円/仕訳165円/仕訳
300仕訳90円/仕訳160円/仕訳

ここで2つの判断基準が得られます。

  • 単価が仕訳数とともに下がらない見積もりは要確認。記帳代行には初期設定やルール作りといった固定的な手間があるため、量が増えれば1仕訳単価は逓減するのが自然です。300仕訳でも100仕訳と同じ単価なら、根拠を聞いてください。
  • 1仕訳150円を超える見積もりは、仕訳数ではなく渡し方が原因の可能性が高い。一般に言われる「1仕訳50〜100円」の上限を大きく超えているとき、値引きを求めるより「クラウド連携に切り替えたらいくらになりますか」と聞くほうが下がります。

方法2:実効時給に換算する

もう1つの検算は、提示額を作業時間で割って実効時給を出す方法です。記帳代行の時間単価の相場が1,500〜2,000円(クラウドソーシング)〜3,000円(専門業者)だと分かっているので、逆算するとその価格が想定している処理速度が見えます。

1仕訳100円・時給2,000円で成り立つには、1時間あたり20仕訳を処理できなければなりません(100円 × 20仕訳 = 2,000円)。この数字が現実的かどうかは、実際の発注事例で確かめられます。クラウドワークス運営の媒体が公開している発注事例には「仕訳数500〜1,000件程度の記帳代行、時給1,500〜2,000円、月の稼働時間40時間程度」というものがあり、これを割り戻すと1時間あたり12.5〜25仕訳。逆算値とよく整合します。

ここから発注者にとって実務的な結論が出ます。

  • 1時間20仕訳は「整った資料が揃っている」前提の速度です。領収書がバラバラ、私的経費が混在、勘定科目の判断を都度問い合わせる必要がある——こうした状態では到底届きません。安い単価で契約しても、事業者が追加費用を請求するか、確認の往復で自社側の工数が増えるかのどちらかになります。
  • 単価を下げる交渉より、資料を整えるほうが効きます。連携を済ませ、私的経費を分離し、勘定科目のルールを事前に決めて渡すだけで、事業者の処理速度が上がり、価格の根拠が変わります。

なお、これは自社で経理担当を雇う場合の比較にもそのまま使えます。月300仕訳なら外注の作業量はおよそ12〜24時間。この時間を自社の人件費に換算して比較すると、判断材料になります。

「丸投げ」の限界:税理士でなければ請けられない業務

経理代行を検討する人の多くは「決算まで含めて丸投げしたい」と考えます。しかしここには法律上の明確な線があります。多くの記事は「決算は税理士の独占業務です」の一文で済ませていますが、どこまでが記帳代行でどこからが税理士業務なのかが分からないと、業者選定の判断ができません。条文と国税庁の解釈にあたって整理します。

税理士だけができる3つの業務

税理士法第2条は、税理士の業務を次の3つと定めています。

  1. 税務代理——税務署などへの申告・申請・請求・不服申立てを代理・代行すること
  2. 税務書類の作成——税務署などに提出する申告書・申請書などを作成すること
  3. 税務相談——申告等に関し、課税標準等の計算に関する事項について相談に応じること

そして同法第52条が「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない」と定め、違反には2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科されうると規定しています(第59条第1項第4号)。

重要なのは、この3つに「記帳」「帳簿の作成」が含まれていないことです。だからこそ税理士資格のない事業者が記帳代行サービスを提供でき、それ自体は適法です。

線引きを分ける2つのキーワード

国税庁が公開している「税理士制度のQ&A」の税理士法違反行為の項には、判断の手がかりになる注釈が付されています。

  • 「作成する」とは、申告書等を自己の判断に基づいて作成することをいい、単なる代書は含まれない(税理士法基本通達2-5)。つまり、税理士の判断のもとで数字を入力する作業自体が直ちに違反になるわけではなく、誰が判断しているかが分かれ目です。
  • 「業とする」とは、反復継続して行い、又は反復継続して行う意思をもって行うことをいい、必ずしも有償であることを要しない(同2-1)。無償なら問題ないという理解は誤りです。
  • 「相談に応ずる」とは、具体的な質問に対して答弁し、指示し又は意見を表明すること(同2-6)。一般的な制度説明と、自社の具体的な数字についての判断は別物です。

発注者としての実務的な確認方法

個別の契約が税理士法に照らして適法かどうかの最終判断は、契約内容の細部に依存します。発注者としては、次の点を業者に確認したうえで、判断に迷う場合は所轄の税務署または地域の税理士会に問い合わせるのが確実です。

  • 決算書の作成と税務申告書の作成を、それぞれ誰が行うのか(社名・氏名レベルで)
  • 申告を担当する税理士は、その業者の内部にいるのか、提携先なのか
  • 提携税理士への報酬は月額に含まれるのか、別途契約になるのか
  • 税務調査が入った場合、立ち会うのは誰か(税務代理にあたるため税理士でなければできません)
  • 勘定科目の判断や税務上の取り扱いについて質問したとき、誰が回答するのか

「記帳から申告まで全部うちでやります」と説明しながら、税理士の関与が説明されない業者には注意してください。逆に、提携税理士を明示し、申告部分は別料金だと最初に説明する業者は、この線引きを理解していると評価できます。料金だけを見ると後者のほうが高く見えますが、比較対象が違います。

自社で雇う場合との比較

外注か採用かの判断材料として、公表されている人件費の目安を並べます。

選択肢月額の目安出典・備考
記帳代行に外注(〜100仕訳)1万〜1.75万円渡し方によって変動
記帳代行に外注(300仕訳)2.7万〜4.8万円同上
パート・派遣を雇って記帳を任せる月10万円程度弥生
経理担当を1名雇用20万〜30万円前後給与・設備費等を含む目安
常駐型・フル外注15万〜50万円経理部門ごと置き換える規模

金額だけを見れば外注が有利に見えますが、この比較には注意が必要です。雇用した担当者は記帳以外の業務もこなします——来客対応、電話、備品発注、社内からの問い合わせ対応。記帳代行に出せるのは、このうち仕訳の作成部分だけです。

したがって現実的な判断は「雇用か外注か」の二者択一ではなく、次の順序になります。

  1. 自社の経理業務を棚卸しし、時間を測る。仕訳入力、証憑整理、支払処理、給与計算、問い合わせ対応をそれぞれ月何時間か。
  2. 外に出せる部分だけを抜き出す。判断を伴わない定型作業が候補です。
  3. その部分の時間 × 自社の人件費単価と、外注見積もりを比較する。
  4. 残る業務を誰が担うかを決める。ここが決まらないまま外注すると、担当者の手が空くのではなく、外注先とのやり取りという新しい仕事が増えるだけになります。

特に見落とされやすいのが4番目です。外注先への資料の受け渡し、質問への回答、上がってきた試算表の確認には、月に数時間は確実にかかります。この時間を見込んだうえで採算が合うかを確かめてください。

見落としやすい追加費用

月額の提示額だけで比較すると、契約後に想定外の請求が積み上がります。年間の総額で比較するために、次の項目を見積もり段階で確認してください。

項目発生タイミング目安・確認ポイント
初期設定費用契約時会計ソフトの設定、過去データの移行、勘定科目マスタの整備。給与計算では従業員の基礎情報入力で1件100円程度を取る例も
仕訳数の超過分毎月パック制の上限と超過単価。繁忙期の仕訳数で試算する
年末調整年1回1名500〜5,000円。月額に含まれるか要確認
決算・税務申告年1回法人10万〜30万円。別契約になることが多い
賞与計算年1〜2回1名1,000円程度
給与明細の郵送毎月10人まで5,000円/月+1名あたり500円程度の例
複数の支払サイクル毎月締め日・支給日が複数ある場合に1サイクルあたり加算
制度改正への対応随時電子帳簿保存法・インボイス制度への対応が月額に含まれるか
解約時のデータ返却契約終了時後述。最重要

電子帳簿保存法への対応は自社の義務

ここは外注しても責任が移らない部分なので、特に注意が必要です。国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトは、電子帳簿保存法について「取引に関する書類に通常記載される情報(取引情報)を含む電子データをやり取りした場合の、当該データに関する保存義務やその保存方法等についても同法により定められています」とし、所得税法・法人税法上の保存義務者は特に「電子取引」について確認するよう案内しています

つまり保存義務を負っているのは発注者である自社であって、経理代行業者ではありません。代行業者が保存作業を担うとしても、要件を満たしているかを確認する責任は自社に残ります。契約時には「電子取引データをどこにどう保存するのか」「その保存が法定要件を満たしていることを誰がどう担保するのか」を書面で確認してください。制度の解釈や個別の適用については、国税庁の特設サイトのほか、国税局電話相談センターに相談できます。

解約時にデータが返ってくるか

経理代行における最大のロックイン要因がこれです。会計ソフトのアカウントが代行業者の名義で契約されていると、解約と同時に自社の会計データにアクセスできなくなる可能性があります。帳簿には法定の保存期間があるため、これは単なる不便では済みません。

  • 会計ソフトの契約名義は自社か、業者か(自社名義で契約し、業者を利用者として招待する形が安全です)
  • 解約時に返却されるデータの形式(会計ソフトのバックアップファイルか、CSVか、PDFか)
  • 返却の手数料と所要日数
  • 証憑の原本・スキャンデータの返却方法と、業者側での削除の扱い
  • 次の依頼先が同じ会計ソフトを使わない場合の移行手順

この5点は契約前に確認し、可能なら契約書に明記してください。トラブルが起きてから交渉するのでは遅い項目です。

発注前チェックリスト【12項目】

見積もりを依頼する前に、次の12項目を自社で埋めてください。これが埋まっていれば、各社から比較可能な見積もりが返ってきます。

確認項目なぜ必要か
1直近12か月の月間仕訳数(繁忙期・閑散期の両方)料金の基準。パック制の上限設定に直結
2依頼する業務の範囲(記帳/給与/決算/請求/支払)行が違えば相場が10倍違う
3ネットバンク・クレカのデータ連携の有無同じ仕訳数でも1.7倍変わる最大の変数
4証憑の渡し方(クラウド/郵送/持参)同上
5月次試算表がいつ必要か(締め後何営業日)スピードオプションで基本料金の2倍以上になる
6部門別損益・月次減価償却・月次棚卸の要否試算表を経営判断に使えるかが決まる
7使用中の会計ソフトと、その契約名義ロックイン対策
8従業員数と給与の締め日・支給日(複数あるか)給与計算の料金構造
9決算・申告を誰に頼むか(既存の顧問税理士の有無)税理士法の線引き。二重払いの回避
10電子取引データの保存方法と責任分担保存義務は自社に残る
11解約時のデータ返却条件契約前に決めないと後で交渉できない
12年間総額(月額×12+年末調整+決算+初期費用)月額だけの比較は必ず外れる

契約前に決めておく実務項目

取引ルールを定めた法律を押さえる

経理代行は業務を外部に委託する取引であり、委託者・受託者の関係を規律する法律の対象になり得ます。2026年1月1日から、従来の下請法が改正され「中小受託取引適正化法(通称:取適法)」として施行されました。適用対象となる取引や事業者の範囲が拡大され、委託側には次のような義務が定められています。

  • 取引条件を明示した書面等の交付
  • 取引記録を書類または電磁的記録として作成し2年間保存
  • 受領日から60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を設定
  • 支払遅延時は受領日から60日を経過した日から年率14.6%の遅延利息

自社の取引がこの法律の適用対象になるかは、取引の内容と事業者の規模によって決まります。判断に迷う場合は公正取引委員会・中小企業庁の相談窓口に確認してください。フリーランスや個人事業主に直接依頼する場合は、フリーランス・事業者間取引適正化等法の適用も検討が必要です。

機密保持と権限設計

経理代行では、他の外注と比べて機微な情報を渡します。通帳、取引先一覧、従業員の給与額と家族構成、役員報酬——漏えいしたときの影響が大きい情報ばかりです。

  • 秘密保持契約(NDA)を業務委託契約とは別に締結するか、契約書内に条項として明記する
  • 再委託の可否と、再委託先にも同等の義務を課すことの明記
  • ネットバンキングの権限は照会のみとし、振込実行権限は渡さない(支払代行を依頼する場合も、承認は自社で行う設計にする)
  • アクセス権を持つ担当者の範囲と、担当者交代時の通知
  • 契約終了後のデータ削除と、削除完了の報告

特に3番目は重要です。記帳のために口座情報を渡すことと、振込を実行できる権限を渡すことは別の話です。照会用の権限で足りる業務に、実行権限を渡さない——この原則だけは崩さないでください。

契約書に盛り込む項目の全体像は外注契約書の書き方で、業者の比較軸は外注先の選び方で整理しています。

よくある質問

Q. 結局、経理代行の費用はいくら見ておけばよいですか?

記帳代行だけなら月1万〜3万円が中心帯です。ただしこれはデータ連携済みの前提なので、紙で渡す運用なら1.7倍程度を見込んでください。給与計算を加えるなら月1.5万〜3万円、決算・申告は年10万〜30万円を別途計上します。年間総額で見るのが実務的です。〜100仕訳・給与10名・決算込みなら、おおむね年40万〜70万円のレンジに収まります。

Q. 相場より安い見積もりが出てきました。何を確認すべきですか?

次の4点です。①仕訳数の上限と超過単価、②月次の納品期限が定められているか、③決算・申告が含まれるのか別料金なのか、④年末調整などの年1回の作業が含まれるか。安い見積もりの多くは、範囲が狭いか納期が緩いかのどちらかで、それ自体は問題ではありません。問題になるのは、範囲と納期が書かれていない見積もりです。

Q. 記帳から決算・申告まで1社に丸投げできますか?

税務申告書の作成と税務代理は税理士法上、税理士または税理士法人でなければ行えません(同法第2条・第52条)。したがって、税理士事務所・税理士法人に依頼するか、税理士と提携している代行業者に依頼するかのいずれかになります。「全部できます」と言いながら税理士の関与を説明しない業者には、申告を誰が行うのかを必ず確認してください。個別の契約が適法かどうかの判断に迷う場合は、所轄の税務署または地域の税理士会に問い合わせるのが確実です。

Q. 顧問税理士がいる場合、経理代行を別に頼む意味はありますか?

顧問料に記帳代行が含まれているかで変わります。記帳代行を含む顧問料の相場は法人で月4万円程度から、個人事業主で月3万円程度からとされています。すでに含まれているなら二重払いになるため、まず顧問契約の範囲を確認してください。含まれていない場合でも、顧問税理士と別業者で会計ソフトが分かれると、データの受け渡しが新たな手間になります。分ける場合は、どちらのソフトに集約するかを先に決めてください。

Q. 費用を下げるために、発注者側でできることは何ですか?

効果が大きい順に、①ネットバンク・クレジットカードのデータ連携を済ませる、②証憑をクラウドで渡す運用に変える、③本当に必要な納品スピードまで納期を緩める、④私的経費と事業経費を渡す前に分離する、⑤頻出する取引の勘定科目ルールを事前に文書化する、です。値引き交渉より、①〜③のほうが確実に効きます。いずれも事業者側の作業量そのものを減らすからです。

Q. 経理代行に払った費用は、どの勘定科目で処理しますか?

一般に業務委託費や支払手数料などで処理しますが、取引の実態によって適切な科目は異なります。考え方は外注費とは?勘定科目・仕訳をわかりやすく解説で整理しています。個別の判断は顧問税理士または所轄の税務署に確認してください。

まとめ

  • 記帳代行の中心帯は月額1万〜3万円。ただしデータ連携済みが前提の価格で、紙で渡す運用では1.7〜1.8倍になる
  • 相場表は仕訳数の一軸しかないが、実際の価格は仕訳数・資料の渡し方・納品スピード・税理士業務の有無の4変数で決まる
  • 見積もりは1仕訳あたり単価(150円超なら渡し方を疑う)と実効時給(1時間20仕訳が目安)の2通りで検算できる
  • 税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士の業務であり、記帳代行業者に申告まで丸投げすることはできない
  • 電子取引データの保存義務は発注者側に残る。外注しても責任は移らない
  • 会計ソフトの契約名義と解約時のデータ返却条件を、契約前に決めておく

最初の一歩は、直近12か月の月間仕訳数を数えることです。この1つの数字がないと、どの相場表も自社の数字にはなりません。数えたうえで、上のチェックリスト12項目を埋めて複数社に見積もりを依頼してください。

本記事の税務・法務に関する記述は、公表されている条文および公的機関の解説にもとづく一般的な説明です。個別の事案の判断については、税理士、所轄の税務署、公正取引委員会・中小企業庁の相談窓口など、専門家・公的機関にご確認ください。

参照元

ガイチュウ博士

私は「ガイチュウ博士」。
外注Baseで、依頼の判断をサポートするために設計された架空のナビゲーターです。

これまでに蓄積された多数の外注事例をもとに、「この依頼は進めるべきか」「一度止まるべきか」を整理する役割を担っています。
感覚ではなく、条件や状況、リスクを分解して判断するのが特徴です。

得意なのは、曖昧な状態の整理です。
「なんとなく不安」「進めていいかわからない」といった状態を、そのままにしません。
チェック項目として分解し、一つずつ確認できる形に整えます。

私は結論を急ぎません。
必要な情報が揃っていない場合は、そのまま進めることのリスクも含めてお伝えします。
判断は、材料が揃ってからで十分です。

外注は便利ですが、同時に判断の連続でもあります。
その判断を落ち着いて行うための補助として、ここにいます。

ガイチュウ博士をフォローする
業種・業務別外注相場・費用の実態

コメント